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ブラック企業

就活生が企業選びで最も気にすると言っても過言でもないのが、志望先が「ブラック企業」であるかどうか。「法律には触れていないからうちはブラック企業ではない」と思う企業の担当者の方もいるかもしれませんが、必ずしも学生がそう見てくれるとは限りません。では、ブラック企業とは具体的にどのような企業のことを指すのでしょうか。ここでは、就活生が知りたい「ブラック企業」という視点から、テレビや新聞でも話題となっているブラック企業の特徴や実態、見分け方を紹介します。

ブラック企業とは

実はブラック企業について明確な定義は存在しません。しかし、サービス残業の強制やパワーハラスメント・セクシャルハラスメントの横行、労働に見合わない著しい低賃金といった明らかに違法な状況が常態化していることがブラック企業の目安だとされています。

ブラック企業が話題になる理由

ブラック企業には長時間労働や過労死の問題が付きものです。その過酷な現実はテレビや新聞で取り上げられ、世間に大きなインパクトを与えました。

代表的なブラック企業の例で言えば、人件費などを削って利益を上げる一方で、長時間に及ぶサービス残業を課したり、賃金が未払いだったりするほか、上司による行き過ぎた指導やパワハラがまん延しているケースも挙げられます。2008年頃から社員を過労死や自殺に追い込む事例が発覚して社会問題となり、2013年には流行語大賞にも選ばれました。

データで見るブラック企業

それではブラック企業と呼ばれる企業はどのくらい存在するのでしょうか。

2014年に日本労働組合総連合会が調査した結果によれば、勤務先がブラック企業だと感じる労働者は、なんと26.9%にも及びます。

この調査によれば、勤務先がブラック企業だと感じる理由の第1位は長時間労働の常態化で、「勤務先がブラック企業だと感じる」と答えた回答者の半数以上(52.2%)が指摘しています。また、仕事に見合わない低賃金や、有給が取得できない労働環境、サービス残業の強要なども理由として挙げられています。

一方、同調査では「勤務先がブラック企業である」と思っていても誰にも相談したことがない人が46.8%に上ることも判明しました。労働者が離職できない理由はさまざまですが、会社の異常を感じつつも誰にも相談できず、孤立していく姿が浮き彫りになっています。ブラック企業では真面目で責任感の強い人が精神的に追い込まれる傾向もあるため、注意が必要です。

ブラック企業の実態

ブラック企業で行われている過酷な労働の具体例をいくつか紹介します。

ケース1:長時間労働

人員をカットされたものの補充はなく、人員が減る前と同じ業務量を残った従業員で回すことに。連日、早朝から深夜まで休憩もなく働き、月の残業時間は100時間ほど。不況を理由に残業代もカットされた。

ケース2:パワーハラスメント

定時後に終礼と呼ばれるミーティングが開かれ、成績が芳しくない社員はここで吊し上げられていた。上司から数字が出ない理由を執拗に問い詰められて、ひどいときには物を投げつけられたり、机を蹴られたりするなどの暴力が振るわれることも。業務時間外の飲み会も強制参加でいつも断れない状況だった。

ケース3:不眠不休での労働

休日は週に1日あるかないか。日によっては休み時間が取れずに24時間連続で働くこともあった。交通事故に遭い、医師から安静の指示が出ているのにも関わらず出勤を強要された。

ブラック企業の見分け方

ブラック企業に就職した場合、その後の生活に苦労することは想像に難くありません。トラブルを避けるためには、就職・転職活動の時点でブラック企業を候補から外しておく必要があります。しかし、ブラック企業を見分けるにはどうすれば良いのでしょうか。

日本労働組合総連合会の調査からも分かるように、ブラック企業の特徴は異常な長時間労働にあります。特に、みなし労働や名ばかり管理職による裁量労働制、社員の自主活動を隠れ蓑にした残業代の不払いは、違法行為に該当する可能性もあります。サービス残業やパワーハラスメント・セクシャルハラスメント、労災隠しは違法行為ですので、これらの状態を放置している企業はブラック企業ということができるでしょう。

また、ブラック企業では絶えず人が辞めていきますから、新入社員の3年以内離職率が3割を超える企業は要注意です。

就職や転職をする前にブラック企業かどうかを見分ける方法はいくつかあります。

①企業またはハローワーク・職業紹介事業者へ情報提供請求

平成27年10月より施行された「青少年の雇用の促進等に関する法律」(通称:若者雇用促進法)により、新卒者等※の求職者は企業に直接または、ハローワークや職業紹介事業所を通じて募集・採用に関する状況や雇用管理に関する状況などを聞くことができます。すわなち、企業側にとっては情報提供の求めに応じる必要があります。詳しく見ていきましょう。

※新卒者の範囲について。
 1.学校(小学校及び幼稚園を除く)、専修学校、各種学校、外国の教育施設に在学する者で、卒業することが見込まれる者
 2.公共職業能力開発施設や職業能力開発総合大学校の職業訓練を受ける者で、修了することが見込まれる者
 3.上記1・2の卒業者及び修了者

ただし、当該募集・求人の対象外となっている場合は、情報提供の求めを行うことができない。

【努力義務】求人票の表示情報やナビサイトでの募集情報

企業がハローワークや自社サイトまたナビサイトなどで新卒者等の募集を行う際に、求職者へ幅広い職場情報を提供することを「努力義務」としています。

【義務】募集・採用や研修、雇用管理について具体的な数字や内容

求人を出しているハローワークまたは職業紹介事業者(職業紹介事業者としての学校を含む)や応募者、求人の紹介を受けた者などから情報提供の求めがあった場合には、下記の(ア)~(ウ)の3類型それぞれについて1つ以上の情報提供が企業に義務づけられています。

【情報提供の項目】

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※1 法令で定める情報提供項目ではないが、参考値として、可能であれば平均年齢についても情報提供するよう、企業に推奨されている。
※2 制度として就業規則等に規定されているものでなくとも、継続的に実施していて、そのことが従業員に周知されていれば、「有」として情報提供される。
※3 業界団体等が実施する検定を活用する場合も「有」として情報提供される。

【参照】就労実態等に関する職場情報を応募者に提供する制度について(厚生労働省)

また、法律の罰則規定にはありませんが、ハローワークから企業側へ、情報提供を求めた求職者に対して、「説明会等の採用選考に関する情報を提供しないこと」「説明会において、情報提供を求める行為をマイナスに評価している言動を行うこと」「面接において、当該応募者が情報提供を求めた事実に触れること」をしないようとする指針が示されています。

②求人情報の内容

「250~500万円」のように、収入額モデルの範囲が広い、給与が相場に比べて異常に高い、残業時間についての表記があいまい、仕事のやりがいを前面に出しているというような表記には注意をしたいです。

③口コミサイト

現役の社員や元社員などが語っている勤め先の実態を確認することができます。

④企業名をネットで検索

報道記事や労働基準監督署、厚労省の発表で是正勧告を受けていたり、社員や家族が会社に訴訟を起こしていたりといった情報を確認できる場合があります。

⑤四季報

3年以内離職率のほか、平均勤続年数、有給休暇の取得率などが参考になります。
そのほか、一見厚待遇な求人情報を出して人を集める場合もありますから、業務内容と給与に見合っているかどうかを同業他社の求人情報と比較して確認してみることも有効です。

ブラック企業のイメージが先行してしまわないように

ときに過労死を招く過酷な労働環境から学生に警戒されるブラック企業。しかし、注目が集まるがゆえに「ブラック企業」という言葉が独り歩きしている現状も存在します。
例えば、先輩社員から遅刻をとがめられたことについて「先輩に怒られた、ここはブラック企業だ」とSNSに投稿するようなケースがあります。会社で起こった個人的に気に入らない出来事を「ブラック」と表現する風潮もあるようです。そのため、ブラック企業のうわさがあるからといって必ずしも労働環境が悪いというわけではありません。
ただし、本当のブラック企業では違法行為が常態化し、深刻な状況があることも事実です。就活を行う学生は陰口やうわさを鵜呑みにするのではなく、情報収集をしっかりと行い冷静に判断することが求められます。

一方、企業側にとって、一度ブラック企業のレッテルを貼られてしまうと、イメージ回復は容易ではありません。「自分は大丈夫」と思っていても、目の届かないところでほかの社員が問題行動を起こしていることもありえます。影響力が大きいだけに、常にコンプライアンスを遵守し、それを監視できる体制を構築しておく必要があるでしょう。