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ダイバーシティとグローバル化

最近、人材ビジネス業界でもよく耳にするようになった「ダイバーシティ」という言葉。みなさんはご存じですか?日本語に訳すと「多様性」という意味で、人事戦略の新たな手法の一つである「ダイバーシティ・マネジメント」の考えを理解するために欠かせないキーワードです。ダイバーシティの考えはもともとアメリカで生まれ、ビジネスがグローバル化するにつれて日本の企業にも取り入れられるようになりました。

ここではその仕組みや、日本社会への導入に至った経緯について紹介します。

ダイバーシティとグローバル化

ビジネスの現場で注目されているダイバーシティ

もともと「ダイバーシティ」とは、アメリカで少数民族や女性の差別待遇をなくすために広がった動きを指します。それが発展し、ビジネスの中で活かされるようになったのが現在のダイバーシティです。この場合のダイバーシティは「多様な人材を雇用しその違いを活かすこと」と捉えられがちですが、実はもっと深い意味があります。

ダイバーシティの本当の目的とは、個人の能力を活かし、組織全体のパフォーマンスを向上させること。これを「ダイバーシティ・マネジメント」と呼びます。組織開発の観点からもダイバーシティ・マネジメントは注目されています。

ダイバーシティが必要とされるようになった背景

なぜいま、ダイバーシティの必要性が高まっているのか。それには2つの理由があります。

  1. 労働環境の変化
    不況や少子高齢化の影響で、終身雇用制度が崩壊しつつある日本。派遣業の普及等に伴い、雇用の流動化も進んでいます。さらに、働く人たちの労働観も変わり、働きやすさを重視する「ワーク・ライフ・バランス」や働きがいに価値を見出す「自己実現」の考え方にも注目が集まっています。いま、企業に求められているのは「働きやすさ」や「やりがい」などの新しい価値を提供するマネジメント。それを実現するための策としてダイバーシティ・マネジメントが推進されているのです。
  2. マーケットの変化
    高度成長期の日本は、国内需要を満たすために市場を拡大し、「効率的な生産」を追い求めてきました。それに対して、現在は市場の成熟期。大量生産・大量消費の時代は去り、消費者のニーズに合った商品が求められています。グローバル化も進み、商品には高い競争力が必要な時代となりました。
    そこで注目されたのが、ダイバーシティ・マネジメント。多様な能力・価値観を持った人材を受け入れることで変化に富んだ柔軟な組織を作り上げ、競争に打ち勝っていこうという試みです。ダイバーシティに取り組む企業は今後も増えると予想されています。

日本におけるダイバーシティの現状

労働人口が減少し続ける中、人材確保の観点からもダイバーシティの考えを採用する企業が増えています。しかし、世界的に見ると日本はダイバーシティの後進国です。例えば女性の社会進出について、女性管理職比率を比較してみましょう。

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※独立行政法人労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較」の表を元にクイックが作成しました。

全就業者に占める女性の割合は各国ともに40~50%前後。これについては日本も遜色ありません。しかし管理職の割合を比較するとその差は歴然。欧米各国は女性の管理職が3割以上、多いところでは5割に届こうとしているのに対し、日本の女性管理職はわずか1割程度です。
もともと日本には「公平性」を重視する風潮がありました。その考えが浸透しているためか、日本企業では社員全体を平等に教育するスタイルが一般的です。特に「男性・大卒・正社員」に適した仕組みを持っている企業が多いでしょう。しかしそれでは、女性や外国人、障がい者など多様なバックグラウンドを持つ人材を活かすことはできません。

企業にダイバーシティ・マネジメントを取り入れるには、まず社員全体の意識と行動を変えていくこと。そして多様性を尊重する仕組みを社内に構築する必要があります。

ダイバーシティを導入するには?

違いを認め、個性を活かして能力をフルに発揮させる”ダイバーシティ・マネジメント。言葉にするのは簡単ですが、実行するのはなかなか難しいものです。ダイバーシティを導入する際のポイントは「仕組み作り」と「意識改革」。多様な人材を受け入れる体制を整備し、その「多様性」を経営層から一般社員まで全員が理解する必要があります。

  1. 意識改革
    ダイバーシティはトップダウン方式で進めていくことが基本。まずは企業のトップが「自社でダイバーシティを推進していく」という決意を、社内外に広く周知していきましょう。トップからのメッセージは大変重要で、仕組みづくりにも大きな影響を及ぼします。
  2. 仕組み作り
    違いを認め、理解し、コミュニケーションを取れる環境を作りましょう。例えば、ダイバーシティに関する項目を評価対象に取り入れることも有効です。
    一方で、さまざまな能力を発揮できるキャリアプランを用意し、多様なキャリアパスの例を示していくことも必要です。それぞれの雇用条件のもとで個人が活躍し、イキイキと働ける環境を作りましょう。

上記2点は基本項目に過ぎず、企業の環境や状況によって要件は変化します。企業のビジネスモデルや目的に合わせた計画を組み立てましょう。

ダイバーシティの導入事例

小売事業を営むA社は、女性の管理職が少ないという課題を抱えていました。社員の5割が女性でありながら、管理職のうち女性は1割程度しかいなかったのです。そこで「女性管理職の比率を4割に」という目標を掲げ、ダイバーシティ推進に取り組みました。

A社の取り組み
まずは社長直轄の「ダイバーシティ推進委員会」を設置。 [POINT:トップダウン]
それから事業所ごとにダイバーシティを推進する責任者(リーダー)を任命しました。
リーダーたちは定期的に集まり、企業が抱える課題について議論を行います。議題には育児や介護など、働く女性が直面する問題を取り上げました。

続いて議論を元に労働環境改善のための行動プランを作成し、経営層に評価してもらう仕組みを構築。[POINT:仕組み作り]
経営層と一般社員との間で、意思疎通を図りました。

結果、一般社員はもちろん経営層の意識が大きく変化しました。[POINT:意識改革]
行動プランを参考にした取り組みが各所で実施され、労働環境の改善が進んでいます。

目標までの道のりはまだ遠いですが、少しずつ進路を切り開いているようです。

参考:リクルートマネジメントソリューションズ

ダイバーシティを導入する際の注意点

ダイバーシティのデメリットは、多様性による人間関係のトラブルが起きやすいこと。本人はもちろん、受け入れる側の意識、体制の整備は必須です。
例えば、時短勤務に対する理解が薄いと「あの人だけ残業もなく早く帰ってずるい!」と不満が生まれ、モチベーションの低下や職場内いじめにつながることもあります。一方で時短勤務の労働者は「簡単な仕事ばかりでキャリアアップが図れない」と悩んでいるかもしれません。
現場の理解を促すことはもちろんですが、「繁忙期は残業をお願いできないか」など、職場の状況に応じて柔軟に対処していくことも重要です。
「意識改革」「仕組み作り」をポイントに、ダイバーシティを上手にマネージできる環境を作りましょう。


ダイバーシティとグローバル化が進めば、日本経済の活性化がもたらされることでしょう。その反面、導入することで相応のリスクを背負うことにもなります。ダイバーシティ(多様性)を課題と捉えるのではなく、個人の「強み」と認識するような組織改革が必要です。